2025年の大阪万博誘致に向けて、万博誘致に携わる方々へのインタビュー連載。第4回目は、関西在住の外国人留学生が関西の企業に就職を目指す留学生就職促進プログラム「SUCCESS-Osaka」に参加する留学生の皆さん。このプログラムでは、大阪万博誘致が目標でかかげる「国連が掲げる持続可能な開発目標(SDGs)が達成された社会」に沿って、留学生が自国の課題をプレゼンし、サポーター企業にインターンシップとして入り課題解決を実現するものです。
今回は、イタリア出身のラゴー・ジョルジョさん、台湾出身のリ・イーケンさん、ベトナム出身のファン・ラム・ミー・キムさんに自国の課題と万博に対する思いを伺いました。
(イタリア出身の関西大学4回生、ラゴー・ジョルジョさん)
(ラゴー・ジョルジョさん)イタリアではインフラが整備されておらず、大阪から京都間は約30分の電車で結ぶ距離がイタリアだと1時間以上かかります。かけているお金も日本が446億ドルに対し、イタリアは45億ドル。約10分の1です。そして、自国のエネルギーが南部では自然が豊かなので太陽発電や風力発電で電力を作りすぎてしまうという問題があるにも関わらず、北部では7割海外の材料を使っています。また、就職の環境も整えられておらず、日本には当たり前にあるような就職サイトや規定がありません。
それらの問題の根本は、僕は「教育」だと思います。自分の環境しか知らなかったら、それが当たり前になってしなうので気づきません。僕は日本に留学することで自国の課題を感じることができました。日本の企業とイタリアの教育に関する課題を解決していけたらと思っています。
(台湾出身の関西大学4回生、リ・イーケンさん)
(リ・イーケンさん)私は雇用問題です。台湾では海外就職が増えており、私もその一人です。自国で学んだ人材が海外へ流出してしまうのは非常にもったいないことだと思います。台湾では雇用環境が整っておらず、基本的にコネです。システムがありません。男女不平等もありますし、就職してからも契約がはっきりしておらず、働く側が弱者の関係です。その点日本は法律に守られていてうらやましいと感じます。「ここで働きたい」と思ったときに同じスタートラインに立つことができるシステムは非常に良いことです。一方リクルートスーツや就活用のカバンは、今後使わなくなってしまうので地球環境に悪いと思いますが…。
また、ヨーロッパでは教育と就職が連携しており、大学で学んでいないと専門職種で働けないのが基本です。「未経験でも採用」というのはないので、大学に入るときにどんなことをしたいかはっきりさせてから入るひとが多いです。「GAP YEAR」といって、2年ほど働いて実務をつんでから大学に入る人もいます。
雇用環境が悪いと経済成長もできなくなりますし、教育の質も下がります。良い雇用システムを構築することは企業にとってもメリットだと思うので、このプロジェクトを通して改善に取り組めたらと思います。
(ベトナム出身の関西大学4回生、ファン・ラム・ミー・キムさん)
(ファン・ラム・ミー・キムさん)私は農作物です。ベトナムには残留農薬や殺虫剤を大量に使った危険な農作物が安く売られています。ベトナムの人たちはそれを知りながら買っており、非常に危険です。ベトナム政府もそのことに危機感を持ち、野菜生産の基準を設けて満たしたものを「VietGap」というラベルを付けて販売したのですが、「VietGap」のことを宣伝しなかったため消費者は知らず、結局うまくいきませんでした。安全な野菜があるのに知らないのは非常に良くないことだと思います。販売ルートも、「ミドルマン」という中間業者が農家から安く買って、そこからまた安く市場で売るというやり方ですので、精査する必要があると思います。そもそも、ベトナム人は政府をあまり信用していません。日本のブランドは信頼度が高いので、このプログラムを通してもっとベトナムの人に野菜の安全性を訴えていけたらと思います。
※6月11日(月)に開催された「SUCCESS-Osaka Future Design」でプレゼンテーションを行う皆さんの様子。座談会も開催され、参加企業の方々と一緒に自国の社会問題を解決するにはどうしたら良いか、しっかりと向き合いました。
(ラゴー・ジョルジョさん)ぜひ大阪を選んでほしいと思います。大阪万博が実現されたら、日本の問題解決にも貢献するのではないでしょうか。特に、大阪の中心地ではお金はたくさん動いていますが、住む人には不便だと思います。外国人は日本人のマナーを知りません。イタリアから来て、日本人が電車を降りる人を優先するなど細かいマナーを全員が守っていることにびっくりしました。それと同様に、外国人にもマナーがあります。今は外国人が日本人のマナーを知らなくて起きるトラブルがたくさんあると思いますが、大阪万博の実現によって日本人のマナーを外国人が学んだり、逆に外国人のマナーを日本人が知ることができたりと、文化の理解が進むと思います。就職して仕事で万博について携わることができたらと思います。
(リ・イーケンさん)私は大阪の人たちは非常に暖かくて接しやすく、外国人にウェルカムな雰囲気が好きです。東京よりも人間味があって、日本らしいなと感じます。一方不安もあり、まだ外国人と共存することに対して人の心の持ち方が不十分ではないかと感じます。私は日本に留学しにきていますが、外国人です。日本人と同じレベルの日本語や扱いをされると、理解ができないときがあります。こっちへ来てから、自分の話したことがうまく伝わらず嘘としてとらえられた経験がありました。「グローバル化」と言っているのに外国人への理解がないことに悲しかったです。万博を通して、そうした意識が改善されていけたら良いなと思います。
(ファン・ラム・ミー・キムさん)私は子供のころから平和について関心を持っていて、1992年に毛利衛さんが宇宙から帰還したときに「地球は一つ。国境は無かった」と言っていたことに感動しました。自分が住んでいる大阪で、国連が平和のために掲げるSDGsに関することに役立てたらと思います。自分ひとりは小さい力ですが、SDGs達成に関わることを勉強していきたいです。