大阪市ベイエリアの人工島・夢洲で4月13日に開幕する2025年大阪・関西万博。1月3日には、開幕100日前を迎えました。昨年12月20日、報道陣に公開された現在の会場の様子をレポートします。
大阪メトロ中央線の延伸工事を行い、市内中心部と万博会場を結びます。コスモスクエア駅~夢洲駅間は、開幕に先立ち1月19日に開通します。
夢洲駅を出るとすぐ向かいに万博会場の東ゲートが現れます。
シャトルバスで来場する場合は、バス停がある西ゲートから入場します。
会場の中央に位置し、1周約2キロのリング状の木造建築物です。建築面積は約6万平方メートルで世界最大級の木造建築です。
日本の伝統的な木造建築様式で、梁(はり)と柱を垂直に交差させ、京都の清水寺の舞台のような造りが特徴です。
国産のスギやヒノキ、フィンランド産のオウシュウアカマツなどで作られた3センチの板を14枚重ね合わせた42センチ角の集成材で建築されています。
現在95%ほど完成しており、2月に完成を予定しています。
エスカレーター5基、エレベーター6基、階段は8カ所を設置しており、屋上に上ることができます。
高さ最大20メートルあり、リングの屋上からは、会場や瀬戸内海を一望することができます。
建設を手がける大林組の担当者は「リングの中で160以上の国と地域が集まり、つながっている景色を現地で見てほしい」と話していました。
大屋根リングの内側には、160を超える国・地域・国際機関が、最新技術や独自の文化を紹介します。それぞれがコンセプトに基づいたユニークな外観で、会場を歩いて見るだけでわくわくした気分になります。今回は建設中のオランダ、韓国の2カ国のパビリオンを見学しました。
「隠れ日の丸」を探せ!オランダパビリオン
1600年にオランダ船デ・リーフデ号が九州に漂着したことに始まり、今年で日蘭交流425周年を迎えたオランダ。「コモングランド(共創の礎)をコンセプトに掲げたパビリオンでは、気候変動やエネルギー、食糧など世界規模の問題解決を目指し、既成概念にとらわれないアイデアの探求を呼びかける展示が行われます。
直方体の建物の中央に、約11メートルの球体が半分埋め込まれた構造です。国土の4分の1が海面下にあるオランダを象徴する「水」にちなみ、外壁には波打った板の装飾を施し、屋根は水面を表し鏡面のように仕上げています。建物の正面からは球体が日の出のように見え、大屋根リングから見下ろすと日本の国旗「日の丸」のように見えます。
球体の直径は、1970年大阪万博のシンボルである「太陽の塔」の金色の顔とほぼ同じ大きさだそうです。
会期終了後に解体されたパビリオンの資材は全て再利用可能で、廃棄ゼロを目指した循環型建築として設計されています。
最新技術を駆使した韓国パビリオン
大屋根リングに面した位置に設置された縦10メートル、横27メートルの大きなビジョンが目印の韓国パビリオン。伝統文化、観光スポット、K-POPなどの韓国の魅力をアピールするメディアアートが放映されます。
敷地面積は、各国のパビリオンの中で最大規模となる約3500平方メートル。3つの展示室で構成し、最新IT技術を活用した体験を楽しめます。
© KOTRA(Korea Trade-Investment Promotion Agency)
パビリオン内では、AI技術を使い来場者の声でオーケストラの音楽を作り流したり、2040年の未来社会に暮らす家族のストーリーを上映したりします。
大屋根リングの中央部には、万博のテーマ「いのち輝く未来社会のデザイン」を体感できる8つの「シグネチャーパビリオン」が設置されています。
8人のプロデューサーが、それぞれ「いのち」をテーマに1人1館を監修し、最新のデジタル技術を駆使し未来の社会の在り方を提案します。
奥から河瀨直美さん、小山薫堂さん、河森正治さんが監修するシグネチャーパビリオン
奥から、石黒浩さん、中島さち子さん、落合陽一さんが監修するシグネチャーパビリオン
38億年の生命の歴史を体感「いのち動的平衡館」
今回は、生物学者で作家の福岡伸一さんが「いのちを知る」をテーマにした「いのち動的平衡館」を見学しました。移ろいゆく流れの一瞬を表現したという、波打つ曲線の屋根が特徴のパビリオン。
内装工事中の館内は、柱が一本もない空間が広がります。館内の中央には、光と音楽を使ったインスタレーションを設置。38億年前に生まれた、たった一つの細胞から始まった生命の歴史を表現します。
© DYNAMIC EQUILIBRIUM OF LIFE / EXPO2025
光の粒が原始の細胞から進化したさまざまな生き物の姿に形を変え、生命の多様性を表現。センサーによって来場者のシルエットを光の粒で立体的に表し、インタラクティブなショーが繰り広げられます。
福岡さんは「自分の生命体は自分のものだと思っていると思うが実はそうではなく、生命の大きな流れの一つでることを感じてほしい」と話しました。
会場内の休憩所やトイレなど20の小規模施設を40歳以下の若手建築家が手がけています。今回、「トイレ2」を設計したグループの一人の竹村優里佳さんに話を聞きました。
約400年前に大坂城再建のために切り出されたが、使われず各地に残る「残念石」。トイレ建設のために、京都府木津川市から高さ2.5~3メートル、重さ7~13トンの巨石5つが運ばれました。建設途中で、近隣のイギリスパビリオンの担当者から「ストーンヘンジのようだ」と言われた逸話もあったそうで、「同じアニミズムのバックグラウンドを持つからでは」と竹村さん。
巨石には、のみで石を割るために開けた「矢穴」や寸法を記した「刻印」が残っています。「残念石」の歴史や由来を記したパネルの設置も予定しているそうです。
竹村さんは「石自体が持つ自然の迫力と400年前に人々が確かに切り出した人間の力を会場に来て五感で感じてもらえたら」と話します。
約5時間にわたり万博会場を歩き取材しました。外観が出来上がっているもの多く、各国が趣向を凝らしたパビリオンが並ぶ会場を見ていると開幕への期待感が高まりました。
常設のパビリオンのほか、連日さまざまなイベントが開催されますので、公式ホームページをチェックしてみてください。
【開催概要】
開催期間 2025年4月13日(日)~10月13日(月) 184日間
開催場所 大阪市夢洲